highland's diary

一年で12記事目標にします。

ボカロ音楽の「透明性」と、歌唱の「人間らしさ」の関係について

asyncvoice.booth.pm 編集で関わりました評論同人誌『ボーカロイド文化の現在地』が通販にて販売開始しました。 冬コミ、C103の1日目でも頒布予定になっています。『ボーカロイド文化の現在地』に加えて、新刊のコピ本『ボーカロイド文化の番外地』やカラー…

「炉心融解」から考える、ボカロ曲の解釈と動画の関係(評論)

https://t.co/6JnleZdFmG1000万再生いったら(GOETIAに寄稿した)炉心融解の記事をブログに投稿する — highland (@highland_sh) 2023年9月29日 www.nicovideo.jp VOCALOID鏡音リンの楽曲「炉心融解」のニコニコ動画版(代理投稿者による2009年の再アップ版)…

『劇場版 CLANNAD』のドイツ語版BDについて

はじめに 2022年9月は何の月か。自分にとっては、2007年9月に公開された『劇場版 CLANNAD』の15周年にあたる月です。15周年を祝う意味も込めて、2020年に海外で販売された『劇場版 CLANNAD』のBlu-ray版について書いてみようと思います。もうとっくに10月に…

世界の終わりの安らぎと、その系譜(評論)

以下に掲載するのは、2018年に刊行された『少女終末旅行トリビュート』という同人誌に私が寄稿させていただいた、「世界の終わりの安らぎと、その系譜」という文章の全文です。 hanfpen.booth.pm 本自体は『少女終末旅行』の二次創作小説集なのですが、自分…

『戦う姫、働く少女』(2017年、河野真太郎)感想

戦う姫、働く少女 (POSSE叢書 Vol.3) 作者:河野 真太郎 堀之内出版 Amazon 『戦う姫、働く少女』(2017年)を読んだので、その感想について書きたい。 ざっくりと内容を言うと、現代における新自由主義的な体制と流動化した雇用形態のもとで(女性)労働者が…

『sense off 〜a sacred story in the wind〜』プレイ感想

ちょっと前からプレイしていたゲーム『sense off 〜a sacred story in the wind〜』(2000年、otherwise)をクリアしたのでその感想について書きたい。 本作はメインシナリオを単独で手掛けた元長征木の代表作であり、ゼロ年代初頭の「セカイ系」美少女ゲー…

「’10年代のTVアニメ各年ベスト」企画の集計結果発表

highland.hatenablog.com 2019年の11月~2020年の1月にかけて「'10年代のTVアニメ各年ベスト」という企画をTwitter・ブログ上で実施しまして、その集計結果の記事を出せていなかったのですが、このたび2年越しに出すことにしました。 Twitterでのハッシュタ…

『東映版Keyのキセキ』序文の全文を公開します。

littlefragments.booth.pm 告知ですが、以前ブログでも触れていた東映版『Kanon』『劇場版 AIR』『劇場版 CLANNAD』の合同評論同人誌を発刊しまして、現在BOOTHにて予約販売中です。同人誌は完全受注生産で、11月末までの予約受付になっています。興味がある…

「東映版Key三部作」の語られなさについてのコメント

私事ですが、現在いわゆる「東映版Key三部作*1」についての同人誌を制作しています。 【募集】現在東映版『Kanon』『劇場版 AIR』『劇場版 CLANNAD』の三作について同人誌を制作する計画を進めています。評論や感想、レビュー、イラストの寄稿についてご興味…

アニメOPに見る画面の立体感とテロップの表現

今回は純粋に視覚的な事柄について書きます。季節外れな話題になってしまいますが、ご容赦ください。 最近アニメのOPテロップについて色々と調べているのですが、その中で思い当たったのが『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(2013)のOP。古い…

劇場OVA『フラグタイム』(2019)感想

同じく劇場OVAとして公開された『あさがおと加瀬さん』に続き佐藤卓哉さんが監督を手掛け、『加瀬さん』は新書館の百合レーベルより刊行された漫画が原作でしたが、今回は純粋な百合レーベルではない、秋田書店の少年誌レーベルより刊行された漫画が原作の作…

’10年代のTVアニメ各年ベストを決めよう

2010年代ももう終わりに近づいているので、’10年代のTVシリーズのアニメ*1からベスト10を選ぶ恒例の企画をやろうと思いました。 その際、全期間全作の中から10作選ぶのではなく、各年でベスト1を1作品ずつ選出しようと決めていました。いわゆる「’10年代ベス…

キング・ヴィダー『群衆』(1928)

世界名作映画全集100 群衆 [DVD] 出版社/メーカー: GPミュージアムソフト 発売日: 2006/05/25 メディア: DVD クリック: 3回 この商品を含むブログ (2件) を見る アニメとはほぼ全く関係ない話題ですが、『群衆』の話をしようと思います。 ※この記事は作品に…

映画『空の青さを知る人よ』(2019)雑感

・ファーストショット、画と言うよりくしゃみの「音」から映画が始まる(くしゃみのアップから全身のロングへの切り替え)。目を閉じてのベースの演奏に入れ込ませて他キャラの動作(ドアの開閉ショット等)、過去の回想カット、と音で繋いでいく(ライブシ…

三本の指輪と拳銃、チョーカー、赤いリボン

アイテムを活用した演出という観点から『天気の子』を整理してみたい。なお全て記憶で書いているので間違った記述があった場合は訂正します。 まず、『天気の子』で一番目立って使われたアイテムとしては一つは拳銃だろう。 拳銃 東京をさまよっていた帆高は…

『天気の子』(2019)初見時メモ

※ネタバレ有。 ・出のショットは雨降る東京の空模様、街並みの全景からのクレーン降下、そしてモーションコントロールカメラのようなトラックバックからの窓ガラス打ち抜き、ヒロインの横顔が窓ガラスに反射した鏡像→実像を順に映す。ヒロインの登場シーンが…

『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』の海外受容について

金曜ロードショーで『未来のミライ』に続き『サマー・ウォーズ』が放映されるとのことで、細田守作品について以前より気になっていることについて書こうと思います。 『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』について まずは本作についての客観的…

『ヤミと帽子と本の旅人』と『セラフィムコール』

※この記事は両作品についてのネタバレを含みます。 数週間ほど前に、百合アニメ『ヤミと帽子と本の旅人』('03)を再見する機会があった。16歳の誕生日に突如として異世界に消えてしまった姉・初美を探し求め、「図書館世界」の管理人・リリスと共にさまざま…

OVA版『YU-NO』('98~'99) を見てみる

anime.dmkt-sp.jp 単純にマルチエンディングのADVゲームを線的なストーリーで進行するアニメに翻案することの難しさについては京アニや東映によるKey作品の映像化といった卑近な例を見てもその苦労の跡が見えるのであって、また、『この世の果てで恋を唄う少…

映画『バースデー・ワンダーランド』(2019)感想メモ

※基本的にダメ出ししてます注意。 ファーストショットから人物不在のBG6連続、そこからパンアップするカメラ、主人公の登場、「空が青すぎて溺れそうになる…」とビートルズの歌詞のようなセリフを言う。続く場面での料理表現の異様な力の入りよう、そしてブ…

『響け!ユーフォニアム』の演出における位置関係の設計~第5話と第8話を例に~

数年前に「『響け!ユーフォニアム』演出総解説」という同人誌に参加しまして、『ユーフォニアム』一期の全13話から、ハイライト場面を11シーンセレクトし、それぞれのシーンについて全カットを解説していくというものでした。私はメンバーの一人として、主…

TVアニメ『彼氏彼女の事情』の演出について――セレクティブ・アニメーションの美学

以下に掲載するのは5年ほど前に、批評誌のアニメルカ特別号『反=アニメ批評 2014summer』に私が寄稿させていただいた、TVアニメ『彼氏彼女の事情』についての文章の全文です。 highland.hatenablog.com 『彼氏彼女の事情』のBD-BOXが先ごろ発売されたので、…

好き/嫌いに対する私の立場

未だに、自分の好きな作品を貶されると死ぬほどムカつくし、自分にとって何の価値も見いだせない/あるいは嫌いなものが褒められているとイライラしてしまう。こればかりは本当に成長しない。 本当はそのような状態からは脱した方が良いのかもしれないけれど…

『バトルアスリーテス 大運動会』5話のちょっとした技巧

昨年も記事で取り上げた作品だけれど、『バトルアスリーテス大運動会』(TV)5話にこれは!と思う描写があったので書いておきたい。なお展開は割とネタバレしてます。 『バトルアスリーテス大運動会』(TV版)のあらすじについて一応述べておくと、 西暦4999…

大月俊倫さんと『ラブひな』、『残酷な天使のテーゼ』の作詞

皆様いかがお過ごしでしょうか。2018年とは何の関係もない話題です。 『アニひな : TVアニメ「ラブひな」ナビゲーション ver.1』を読んでいたら、監督の岩崎良明さんとプロデューサーの大月俊倫さんが対談している記事があった。 大月俊倫さんと言えば『エヴ…

映画『若おかみは小学生!』/反射についてのメモ

冬コミケの季節ですね。私は京都大学アニメクリティカさんのところの新刊に映画『若おかみは小学生!』についての記事で参加しています。 映画『若おかみは小学生!』の経済性についての試論 というタイトルで、あの映画の脚本ないし演出が、いかに効率的に…

舛成孝二さんと鈴木博文さんのEDアニメーション【検証】

今期のアニメ視聴と並行して『バトルアスリーテス 大運動会』(TV)を少しずつ見ている。 今期だと『ゴブリンスレイヤー』でも組んでいる倉田・黒田コンビが全話脚本を担当し、正統派なエンタメでありながら同時になかなかエグい展開もありで見どころは多い…

2017年下半期新旧映画ベスト10

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今年はアニメの記事もちゃんと書く予定です。 2017年は3年ぶりくらいに映画見た本数が150本切りました。とはいえ五つ星映画で上映会もやったし、岩井俊二オールナイトで『スワロイテイル』『リ…

2017年上半期新旧映画ベスト10

あまり更新しないのも何なので、上半期に見た映画91タイトル(新作旧作含む)から良かったものを紹介。 アニメブログなので、アニメ関連の更新をするべきだろうけれど、ネタ的に書いたりするのに時間かかりそうなので。 それでは余計なことは言わずに、以下…

山川吉樹『HELLS』(2008)

未見の人になるべく見てもらいたいので、ネタバレなし紹介。 多くの人に見てもらおうと考えるなら本当はタイミングよくネタに乗っかってバズらせるとか、そういう手段があるのかなと思いますが(今の『けものフレンズ』みたいな)、自分はそういうのが上手く…