highland's diary

一年で12記事目標にします。

アニメ制作・アニメ業界もののアニメって

水島努×P.A.WORKSの新作アニメ『SHIROBAKO』はアニメ業界が舞台で制作進行が主人公のアニメ制作アニメ。世間的には、幾原監督をモデルにしたというアニメ業界小説『ハケンアニメ!』 が話題になるなどアニメ業界ものはタイムリー。しかしアニメ制作・業界物についてまとめているような記事が見当たらなかったので、多分に紹介文的なものになってしまうかもしれませんが書こうと思いました。

SHIROBAKO』に関して言うと、水島監督×シリーズ構成:横手美智子のコンビは『ハレグゥ』を初め『イカ娘』『じょしらく』など多くの作品で組んでいるけど、そこにP.A.の関口可奈味キャラのニュアンスが加わり、音楽は『TARI TARI』『ガルパン』の浜口史郎というスタッフィング。おそらくは『いろは』に続くP.A.の「働く女の子」シリーズ2弾ということですがアニメ制作アニメということで似たような系列の『まんがーる!』のような雰囲気も込みでいくのかなあ、、とか。女の子5人組がメインで、水島監督で横出美智子シリーズ構成という点のみ取り出せば実質『じょしらく』ですが。

 企画の始まりは2、3年前に水島監督と乗ったJR中央線の車中でのこと。制作現場を舞台にした作品を作りたい。制作進行の話ではなくて、制作進行の目を通して見たクリエーターへの敬意や、この業界の今を描きたいという話をしました。監督も制作進行の頃から作ってみたかったようで、「実はファーストシーンはもう考えてあるんです」と、2社の進行車が交差点で並ぶシーンの説明を受けました。監督構想20年のシーンです!じゃあ、作りましょう、というのがこの作品の始まりです。

 

(「メーカー横断アニメガイド2014SUMMER」『SHIROBAKO』プロデューサー 堀川憲司 インタビューより)

水島監督が(シンエイ動画での)制作進行時代から温めていた二十年来の企画とのことで、ギャグやフィクションを交えつつもアニメ制作工程を描きそれをエンタメとして仕上げていこうとする気概も伺えます。

水島努監督の制作現場時代の体験談もエピソードなり描写なりで活かされるのかなと思いますが 、ここに来て自分にとって思い出されるのは同じく制作進行の女の子が主人公のOVAアニメーション制作進行くろみちゃん』シリーズ。

 (……) その後さらに、ラッキーモアというアニメの撮影会社の立ち上げに参加し、その流れで、ラッキーモアの出資会社であったイージー・フィルム(以下イージーと略)というアニメ制作会社の制作部に移籍しました。そのイージーの頃の制作経験が『アニメーション制作進行くろみちゃん』で描かれているわけです。

 

大地丙太郎『これが「演出」なのだっ 天才アニメ監督のノウハウ』より)

大地監督のキャリア的には『ドラえもん』の撮影監督を5年ほど務めた後初のコンテデビュー、そして一旦アニメの仕事を離れた後に再び制作進行としてアニメ業界に復帰していますが、この頃の実際の経験が『くろみちゃん』においても活かされているとのこと。実際、制作進行の主人公に関してではないですが、大地監督がコンテ打ちの際に笑いながら説明しているのを前にアニメーター陣はひたすら真面目に下を向いてメモを取っている……というような上掲書において語っているようなエピソードが『くろみちゃん』においてワンシーンとして出て来るなど、実際の経験に裏打ちされた描写がなされている部分も感じられます。

アニメーション制作進行 くろみちゃん [DVD]

アニメーション制作進行 くろみちゃん [DVD]

 

 『くろみちゃん』はやや誇張も含まれますがアニメ制作の常に切迫したスケジュールや品質管理に関する厳しい状況をコメディタッチで描いていて、それにシリアスな要素を絡ませる大地監督お得意の芸風。

2作目はスケジュール管理に関して質よりも早さを優先させることで厳しい制作状況を乗り切ろうとする制作デスクが登場し、テーマ的にも更に踏み込んで、締め切りをとりあえず乗り切ろうとする現場主義的な考えと、それでも品質を維持しようとする向きとの対立軸になる。

制作されるアニメ本数に見合った人員やスケジュールが確保されていないアニメ制作の現状に対する大地監督の問題意識が根底にあるのでしょう。

 思えばアニメーションの厳しい制作現場における現場主義・商業主義に対しそれに抗って真摯な作品作りを進行しようとする態度を真面目に作品として描こうとするならばそれは作品内としては「理想/現実」の対立軸というところになるので作品のドラマ性はそこで担保できるのだと思います。『SHIROBAKO』でもその面は関係してくるのでしょうか。

ところで、アニメ制作に題材を取ったアニメのエピソードは多々ありますが、

  • 妄想代理人』10話「マロミまどろみ」(脚本:吉野智美 絵コンテ:佐藤竜雄 演出:遠藤卓司)
  • こいこい7』6話「熱血闘魂・鬼軍曹どのっ!制作進行サクヤさんです〜」(脚本:社綾 絵コンテ:八谷賢一 演出:米田和博)
  • GOLDEN BOY さすらいのお勉強野郎』6話「アニメーションは面白い!」(脚本・絵コンテ・演出:北久保弘之)

 など、役職でいえばアニメーションの制作進行を主人公としたものが目立ちます(前者2本はTVアニメの1エピソードで、後者1本はOVA)。『SHIROBAKO』も主人公は制作進行の子のようだし。その理由として考えられる内容のことを『妄想代理人』監督である今敏が証言しています。

他でもない我らが「業界物」なので、アニメの舞台裏、制作現場やスタッフ、制作プロセスなどの紹介も重ね合わせた方が良かろう、ということになった。となると、原画動画、美術 背景、色彩設計、撮影などなどの絵にかかわるポジションは主人公として除外されることになる。なぜなら彼らの仕事は机から動かない。監督や演出というポジションも主人公として魅力ではあったが動く範囲が限定されていることに変わらない。そのポジションの仕事ととして動き回ってくれないと各プロセスやスタッフの紹介もままならない。そして各スタッフの間を動き回るポジションというと「制作」しかない。制作といってもプロデューサー、制作デスク、制作進行など 色々あるが、各スタッフ間を頻繁に回って歩くのは「制作進行」しかない、ということになる。
 

妄想の九「アニメのアニメ」|「妄想」の産物|KON'S TONE

 アニメ制作の舞台裏に触れるような「業界物」の内容にするならば、アニメ制作の最も多くのセクションに関わる人間であり、かつ能動的に行動をとり物理的にも移動の多い制作進行を主人公にした方が当然やり易い、という計算の上で制作進行という役職が選ばれていたのが分かります。

アニメ制作ものとして個別に作品について触れると、「マロミまどろみ」は『妄想代理人』の1エピソードということで、アニメ制作の逼迫した状況を体現するかのようにアニメ制作の各役職が次々と少年バットに始末されていき、それを制作進行の主人公の回想という形で描いています。各役職の担う役割についても詳しい解説が入る。

OVAGOLDEN BOY』は北久保監督、キャラデの川元利浩のもと磯光雄本田雄の参加した作画アニメとして知られていますが6話は当時のセルアニメの制作の様子が細かく分かるエピソード。アニメ現場現場の実写素材を使ったりとなかなか面白く、またオリジナルエピソードの最終話としてそれまでのヒロインを総括するような構成にしているのも上手いし、原作の江川達也、北久保監督、作監川元利浩さんそれぞれをモデルにした原作者、監督、作監も本編内に登場。

f:id:ephemeral-spring:20140830071514j:plain

 『こいこい7』6話は主人公達がアニメ制作に駆り出されるギャグ回ですが(というかこのアニメはほぼギャグ回かもしれませんが)、過密スケジュールを管理するスパルタ制作進行として奔走するサクヤの台詞

「いいか!貴様ら動画は原画も描けない無能な連中だ」
「私の任務はその無能な貴様らにきちんと動画を上げさせることだ」
 
「いいか。貴様らは人間じゃない。色を塗るためだけの機械だ」
「筆を持たない貴様らにはひとかけらの価値もない」

 f:id:ephemeral-spring:20140830065322j:plain

 などはなかなか衝撃(というか、言ってる当人がまず人間じゃなくサイボーグなんですが)。期日に間に合わせるため3徹したり逃げ出したスタッフを強制連行したりする描写もあったり。

また、アニメ制作の工程をなぞるようなものとは別に、プロデューサーと原作者、監督との駆け引きに焦点を置いているエピソードとしては

とかがあるかと。『こち亀』原作にもあるエピソードですが、アニメ版ではよりアニメに関して細かい描写になっています。両津が原作者不在の状況を利用して原作者の代理人としてアニメ制作に意見出しを行い、関連商品を売りたいスポンサー側の要求を持ち込み少女漫画の内容を改変しまくった挙句ロボット戦隊変身バトルものの商品紹介番組にしてしまうという内容ですが…。この回はアイキャッチ、EDが劇中作のものに差し替えになるなど遊び心が尽されてます。

f:id:ephemeral-spring:20140830072044j:plain

原作サイドとアニメ作品との関係というのをより深く掘り下げてシリアスなものにしてかつ今風のアレンジになっているのが

かもしれません。制作現場までは踏み込みませんがこれもアニメ回で、倉田脚本のオリジナル回として、センセーショナルな内容でもあったので記憶に新しい人も多いかもしれません。

そういえばこの当時『こち亀』 の監督だった高松信司監督は「アニメ業界ものやりたい」というつぶやきを以前していました。結果的にTVシリーズとしては水島監督が先に着手することになりましたが、高松監督のアニメ業界ものも見てみたいです。

高松監督といえば、アニメ制作回というのとは少し違いますが、コンテを担当した『銀魂』94話「電車に乗るときは必ず両手を吊り革に」のアバンでこんな事をしていたのが思い出されます。


銀魂 アニメになるまでの過程 - YouTube 

あくまでメタなギャグとしてですが、アニメを構成する素材を露呈させそれをスラップスティック的に見せて行くところに面白さがあるし、アニメ制作を題材にしています。

同じようなコンテ撮りやレイアウト撮を見せるような描写は川口監督の『SKET DANCE』でもしていました。

こち亀』のような長期シリーズのアニメだとアニメ制作回も挟みやすいのだと思います、『星のカービィ』では2回やっていましたが、『ハヤテのごとく!』『ケロロ軍曹』『美少女戦士セーラームーン』のいずれもファーストシーズンでアニメ回があります。

f:id:ephemeral-spring:20140901062918j:plain

f:id:ephemeral-spring:20140901063141j:plain

f:id:ephemeral-spring:20140901063220j:plain

上から『ハヤテ』、『ケロロ』、『セラムン』。

星のカービィ』49話のアニメ制作回は徹夜での作業、アニメーターの重労働、逼迫したスケジュールなどを描き、「アニメーターにも基本的人権はある」とキャラに言わせたりし、アニメ内でアニメの制作状況についてのバッシングを入れたり自虐ネタも取り入れたりといったアニメ内からの告発めいたエピソードとして有名ですが、本編内、アニメ放送の最中ぶっつけ本番でアフレコすることになったキャラの会話がこれで。

ブン「あーじれってえアニメだなもう」

フーム「さっきから全然動かないで突っ立って喋ってばかり」

パーム「動かすのが大変だからお喋りして誤魔化してるんだ」

メーム「しかも動いてるのは口だけ」

フーム「でもほら、カメラワークはあるわ」

メーム「動いてるように見せかけてるだけ。これじゃサギよ」

パーム「こういうアニメは安く作れるね」

エスカルゴン「お金も時間も無いんだからしょうがないでゲしょうが!」

 この49話の脚本は『カービィ』総監督の吉川惣司さんで、『ルパンVS複製人間』も監督している大ベテランですが、虫プロ設立後まもなくの日本TVアニメ黎明期からアニメーターとして活躍されている方による脚本と考えると重みがあるしブラックなリミテッドアニメ批判としても取れるのが面白い。89話の方の脚本も合作で書いていて、そちらはオタク的なネタも多くパロディ色も強い内容になっていましたが。

 他にもハヤテのアニメ回はアフレコアニメ的内輪ネタもあったりケロロのアニメ回では劇中劇のアニメの原画を声優が描いていたりしていてネタとしては面白いですが、一旦このくらいで。

あと、そういえばOVAの『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』の4話もアニメ回でした。

 OVA小麦ちゃん』シリーズは3話から制作が京アニからタツノコに移り、それまでのパロディ多めのギャグ路線は踏襲しつつ米たに監督のカラーが強くなりタツノコの自社パロが入ったりギャグ色のより強いアチャラカ気味になっていた印象ですが、アニメ回も、アニメ制作については段階的な描写はありますが、脚本家の「あかほりさとろう」が登場したり「ヤシガニ」ネタが入ったりするギャグ回。

f:id:ephemeral-spring:20140901060505j:plain

f:id:ephemeral-spring:20140901060705j:plain

 TVやOVAシリーズ内の1エピソードとしてアニメ回が挿入される場合、それはメタなギャグとして行ったり、アニメ制作者との距離を近づけるようなものだったり、アニメファンとしての製作過程への興味を刺激するようなものとしてのいわばファンサービスであったり内輪ネタであったりすることが多いかと思います。

余談としては、『小麦ちゃん』4話と『ハヤテ』44話とでどちらにもナベシンが劇中でのアニメ制作スタッフとしてカメオ出演を達成しています。

f:id:ephemeral-spring:20140901063345j:plain

f:id:ephemeral-spring:20140901063707j:plain

『ハヤテ』一期に関してはおそらくは川口監督のつてでナベシンはローテに入っていたので他の回でも出まくっていますが『小麦ちゃん』の米たに監督の回でも出演で、もちろん声も本人。ナベシンの出演するような回だとアニメ制作のメタネタやパロネタでも許されるというようなところでしょうか。

アニメ制作アニメではアニメ内にまた劇中劇という形で作品が生じるいわゆるメタ構造になるわけですが、その作品の中での現実と作品のリアリティのラインも重要な要素になるかと思います。そこをギャグに振るかどうかというのもあるし(最近だと『俺妹』などは劇中劇については凝っていて後にスピンオフ的に作品が出たりしているし(実際の制作経緯はまた違うみたいですが)『ブラック・ブレット』劇中アニメの「天誅ガールズ」が独立に商品展開したりしていますが、『SHIROBAKO』でも劇中劇と絡めて(商品的にも作品的にも)どのように展開していくのかというのは楽しみです)。

また、アニメ制作を題材にした漫画や小説と違いアニメ制作アニメは実際の経験に裏打ちされた部分がでるのがやはり好きだし、そこに業界内からのカミングアウト的なものを感じたりもします。

そういえば以前、こんな話をしました。

 漫画制作が題材の漫画といえば『サルまん』や『バクマン』などスッと浮かぶのに対しアニメ制作が題材の漫画は少数タイトルに限られてる印象があります。

そこで気になって、アニメ制作を題材にした漫画についてもちょっと調べてみたところ、結構なタイトルが出ていますね。

戦場アニメーション 1 (ジャンプコミックス)

戦場アニメーション 1 (ジャンプコミックス)

 
アニメ95.2

アニメ95.2

 
アニメもんエッセイ~お江戸直球通信~ (NORA COMICS SP)

アニメもんエッセイ~お江戸直球通信~ (NORA COMICS SP)

 

 『これだからアニメってやつは!』はアラサー女性のアニメ制作進行を主人公にした漫画で、その点ではやや『SHIROBAKO』とも似てるかもしれませんが実際は全然違う感じはします。余談ですが1巻巻末には「アニメ監督という仕事」について作者と大沼心の対談というかロングインタビューが収録されているのでお勧めです。

自分は前から好きなのは『レイアース』などで有名な元アニメーターの石田敦子さんの『アニメがお仕事!』ですが、やはり実際の経験に裏打ちされた部分が大きいし、キャラの掘り下げやリアリティの面でも優れていると思います。アニメ―ター主人公たちの青春ラブストーリーモノですが、仕事に遣り甲斐を感じる部分も伝わるし原画マンや動画チェッカーの労苦、アナログ時代のアニメ制作の状況も分かり、仕事と恋愛の葛藤もある。

 自主制作アニメを題材にした今井哲也の『ハックス!』も佳作で、学生主人公の青春ものでもあり、アニメに関わらず現代におけるクリエイティブな創作行為全般に通じるような普遍性を持っていると思います。

ハックス!(1) (アフタヌーンKC)

ハックス!(1) (アフタヌーンKC)

 

 また、アニメ制作を題材にした漫画とはちょっと違うと思いますが声優を題材にした漫画も最近は数多くあるようです。

newsdays2008.blog.fc2.com

web.archive.org

漫画『こえでおしごと!』『REC』などはアニメ化もしていましたが、アニメ化すると実際に声優さんによる声が声優キャラクターに付くのでメタ・アニメ的になると思います。『REC』もシャフト制作、故・中村隆太郎監督でアニメ化していましたが、新人声優キャラの恩田赤を実際の新人声優(当時)の酒井香奈子が演じているし。吉田玲子脚本のもと漫画とは少し構成も変えて「恋と仕事」を軸にして実直に描くようにしており、また各回脚本やOPでのビジュアルなど大胆にオードリー・ヘプバーンをフィーチャーしてのアニメ化で、アニメ独自の良さがありました。ちなみに『REC』原作の方では声優ヒロインの妹がアニメーターであり、後の方でヒロインとしても出てくるし、アニメ業界の話も絡んできています。

REC DVD-BOX

REC DVD-BOX

 

 ここまできて『SHIROBAKO』に話を戻すと、主人公:制作進行をはじめ声優、アニメーター、ライター志望、CG担当という5人はとてもバランスの良い采配になっていると感じます。制作進行を主人公に据えることでアニメ制作工程についての見通しをよくし、今やますます重要性を増しつつあるCG担当を投入する一方、それに偏らないようライターなどもあり、新人声優という役もアニメファンにとっては魅力的なものとして機能する。そして彼女らが学生の頃自主制作アニメを作っていた仲間であるという設定も、既存の作品でも取り上げられていた部分を持って来る感じでニクいと思います。この配役は水島監督のキャリアとも深い関わりがありそうですが、このあたりはプロデューサー側の采配もあるのか、それとも水島監督によるものでしょうか。

なお、TVアニメやOVAでのアニメ回についてはここでとり上げた以外にもあると思いますが、自分の知っていて心当たりのある範囲では大体これが全部だと思います。長くなりましたがそれでは今回はこの辺で。
 
(追記1)2014.9.11 
TVシリーズの『ミンキーモモ』第二作にあたる『魔法のプリンセスミンキーモモ 夢を抱きしめて』(1991~1992)、通称「海モモ」の1エピソードもアニメーターが主人公の話と聞いたので追記します。
首藤剛志さんがWEBアニメスタイル連載のコラム「シナリオえーだば創作術」この回 で触れていましたがまだ見たことが無かったので見てみました。
リンク先でも触れられているように演出家の石田昌平さんの追悼エピソードとして制作された回で、プライベートフィルム的な要素も強いですが、生前の石田昌平さんの原案を作中のエピソードに取り入れているのに伴い脚本クレジットも首藤剛志さん石田昌平さんの共同表記。石田さんと重ね合わせる形で、死に瀕したアニメーターである一人の男を主人公にしており、彼が自らのキャラやモモに見送られながら月夜をバックに夢列車に乗って空に去っていく、昇天の美しいシーンで締めくくられます。彼の死の一因としてはアニメ制作現場の厳しさも描かれますが、そこが主眼にあるわけではなく、夢敗れ死んだ彼を悼むのと並行して彼の夢が継承されていくという要素も入っており、石田昌平さんという実在のアニメーターを悼む内容であるという外部的な文脈なしでも感動させられるような名エピソードでした。できればこれを機に『ミンキーモモ』のシリーズも通して見てしまいたいなと思います。そして『ミンキーモモ』の原案やメインの脚本でも活躍しこの話の脚本やコラムを書いた首藤剛志さんも今や故人になってしまわれました。ここで冥福をお祈り致します。
 
(追記2)2014.9.24
記事内でナベシンについて書いたのですがナベシンが監督した『へっぽこ実験アニメーション エクセル♥サーガ』(1999~2000)、でもアニメ制作回、というかアメリカを舞台にしたジャパニメーション回がありました。
  • 『へっぽこ実験アニメーション エクセル♥サーガ』17話「アニメーションUSA」(脚本:倉田英之 絵コンテ:別所誠人 演出:平池芳正・福多潤)

あんまりアニメ制作の描写もないので入れなかったのですが一応アニメ回なので書いておきます。エクセル演じる三石琴乃本人でセラムン(の月野うさぎ)パロやってたりネタ的な見所は満載、この頃のやりたい放題やってた(今も?)ナベシン節も楽しめる。脚本書いた倉田も後にホントにアメリカ行ってそれでルポ書いたりしてましたね。

ついでに、アニメ制作の描写があるだけなら『おたくのビデオ』2話とかも浮かびますけど、あんまり関係ないですね。

(追記3)2015.1.17

アニメ業界漫画に関して追記です。

上井草アニメーターズ (1) (カドカワコミックスAエース)

上井草アニメーターズ (1) (カドカワコミックスAエース)

 
新しく見つけたアニメーター漫画を追記。他にも畑健二郎が同人でやってた声優漫画がアニメ化したりするみたい。エロゲ業界漫画だけでも可視範囲で複数出てきてるし、全体にお仕事モノとしての業界モノの機運の高まり?
たまにアニメーターの同人誌とかに、原画マンや制作進行を主人公にした漫画みたいなのが載ってたりするのも見るので、業界モノをやりたいって人は少なからず居そうですね。
『SHOROBAKO』の所為もありか、こち亀でもアニメーター回がありましたね。『SHOROBAKO』はくじアンみたいに劇中劇もアニメにするとか。
もし『MAICO 2010』みたいにアニラジをアニメ化するとかがあるなら渡会けいじ先生の『O/A』やって欲しいかな。でもあれは声優じゃなくてアイドルか…。
ハケンアニメ!

ハケンアニメ!

 
アニメーションの基礎知識大百科

アニメーションの基礎知識大百科