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highland's diary

多忙のため休止中。何かあればコメントでお願いします。

MADOGATARI展 Tokyo Encore

シャフト アニメ 感想 雑記

25日までやっていたMADOGATARI展のTokyo Encoreに先日行ってきました。去年もやっていたのですが、行けたのは今回が初めてです。

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シャフトといえば斎藤千和さん、という感じがします。

前回東京でやったときの概要などは以下のレポ記事などで見れます。

シャフト40周年「MADOGATARI展」レポ 『まどか☆マギカ』新作映像も - KAI-YOU.net

シャフト40周年となる去年から全国でやっていて、もう全日程終わってしまっているのですが、12月には金沢でMADOGATARI GALLERYがあったりするようです。

 以下はその展示を見てきての感想です。

展示内容

・展示で最初に通るのが歴代シャフト作品キャラクターで全面に彩られたウェルカムトンネルで、ちょっと壮観で感動。

入場時の窓口で見せられるのがオリジナルのマナームービーで、まどかと物語シリーズのキャラがコラボして、レトロゲーム風の画面でマナー解説している動画なのですが、こういったマニアックなディティール部分にちょっと驚かされる。

 

・展示自体を見て思ったのは、展示してある資料とは別に展示の仕方が凄く凝っているということ。

・まず、展示の仕方でプロダクションデザインを作っている。物語シリーズのブースだと原画集と同じように黒バックに赤、まどかだと全面が白バックの空間に 原画やタブレットディスプレーが絵画枠にはめ込まれて展示されている(11話のこれ↓風に)。

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・あとは観客の目線の位置と関係なく壁一面にずらっと原画やレイアウトが並べられてて、一個一個の見やすさではなく全体としての景観、見え方重視の見せ方だと思う*1。コンセプトに沿って凝りすぎて、逆にちょっと見づらくなっているとこ含め「シャフト」な感じがするw

・あと BGMは会場に流れてるんだけど、劇中で流れてるアニメ本編のムービーに音声がない。極めて客観的に流れる絵を見せている。 この辺がとても「クール」な趣向と感じる。

・加えて、最低限の作品説明以外にキャプションや解説がほとんどなかったということ。これは、制作工程の解説などを制作資料に付与することで、観客の見方を誘導するエキシビジョン(近藤喜文展など)とは対照的だと思う。もちろんこういう展示には、制作スタジオというよりも「まどか」や「化物語」といった作品自体のファンも来るだろうし、マニア含め色々な層のファンが来るだろうのでこうなった側面はあると思うけど、「見る側の自由度が極めて高い」というのは確かに感じた。 その辺が「クール」な印象に繋がっている*2

・実際、エンドカードのゾーンあたりでは「生の素材を雑多に並べた」というような趣向になっていたりして、ガラス台の中に 色紙、アフレコ台本、絵コンテ、設定メモなどがごちゃまぜに展示されていた。 昔のシャフトの撮影台とおぼしき器具もあったけどこれにも解説はなかった。でもそれが不満と感じることはなく、それ含め展示の仕方なんだなあと思えるところがあった。

・なお図録を見ると、会場の場所と空間によってデザインは変えているとのこと。前に東京でやったときは天井にまで原画貼って展示していたみたいで、凄いサービス精神だと思う。
・展示のコンセプトデザインはブックデザイナーとして知られるミルキィ・イソベさんが手掛けているとのこと。こういう人の名前にも、注目していきたいと思えました。

・今回の目玉でもある特別上映の『惑語』は、物語シリーズのキャラがまどマギ魔法少女だったらどういう属性になるか?というのの紹介ムービーで、本の見開き風の特別なデュアルディスプレーで展示しているのが面白かった。でも「設定を見せる」という側面が強く、映像的には一回見れば十分なものだった。

まどマギ新作のコンセプトムービーはバレエというもあって、プリンセスチュチュを彷彿とさせるものだった

以下、細かい感想(読み飛ばし推奨)

・『エトレンジャー』以後のほぼ全作品が置いてあった。『エトレンジャー』はセル画や設定画。『ドッとKONIちゃん』『G-onらいだーす』『この醜くも~』『桜通信』などはさすがになかったけど、それ以外はほぼ全てあった。
傷物語吉成鋼さんの原画が見れたので良かった。というか思ったより吉成曜さんの原画が多かった。『ネギま!?』と『ぱにぽに』『まりほり』のOPに加え、『まほろまてぃっく』のまで一枚置いてあった(セル画つき)。セレクションをやった人はマニアだと思う。
・伊藤良明さんの「ルーレットルーレット」の原画とか見たかったけど流石になかった。
・新房さんの絵コンテは『ネギま!?春』と『ひだまりスケッチ×365』12話『ひだまり特別編』(七夕の青虫のくだり)があった。あとはまどかのコンセプトムービーのコンテ。『ネギまOVAと『ひだまりスケッチ×☆☆☆』1話のアバンはクレジットされてなかったが少なくとも一部新房さんが描いていたのが分かった。
・「するがモンキー 其ノ參」の対レイニーデヴィルのとこの原画は生で見ると凄かった(複製原画だったっけ?)
・やはり『絶望先生』の絵コンテが一番密度高かった。山村さんの絵コンテ。「ここの素材は原作のこのコマから」 みたいな指示が頻繁にあるのが興味深い。
・ 『三月のライオン』はキャラ設定が置いてあった。
・ 『化物語』10話のあおきえいさんの絵コンテは思ったよりずっとあおきえいさんそのままの絵コンテだった。
・ 『化物語』1話と2話の絵コンテがあった。武内さんの。尾石さん新房さんの修正が結構入っているだろうけど展示を見る限りでは武内さんが描いているようだった。
・ efのPVの大沼さん絵コンテはキャプションがデジタル入力だった。PVの絵コンテ大沼さんなのは初めて知った。
・ 『月詠』の草川さんのOP絵コンテ。テロップ指示もコンテに描きこんであった。
・『月詠』 ED絵コンテはクレジットなかったけど新房さんでほぼ確定だと思う。 文字やペンタッチが新房さんのそれ。
・『荒川』 OP2の山本沙代さんの絵コンテは一人だけサインペンで描いてあって、ポップな絵柄と相まってひときわ目立っていた。
・『ダンスインザヴァンパイアバンド』の漫画家の人が描いた1話の劇中劇絵コンテとか面白い。
・ 『鬼物語』の絵巻物のとこの生原画(紺野大樹さん)がずらっと並んでるのは圧巻。
物語シリーズの何かだったか。 雲のセルの引きスピードをカット内で二種類分けていたりした。
・原画も見ていると「ポスタリゼーションの処理」「セルバレしないようにそれぞれの紙の大きさ分くらい作画お願いします」「このフォルムに合わせなびきA2A3お願いします 」など詳細な指示を読んでいくのは面白さがあった。
・『REC』の中村隆太郎さんのOP絵コンテは、パステル調の水色や赤など色鉛筆使って優しいトーンで描かれていて、これだけでも見れて良かったと感じる。
・『俗・絶望先生』の錦織さんの絵コンテ「リリキュアGO! GO!」のやつがあって、ラフなタッチだけど可愛く描けていた。
・あと面白かったのは『絶望先生』の尾石さんのOPのこのカット。

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原画を見ると、「ニンプが着物を着るのは特に難しい訳ではないみたいで、帯をきつく締めたりしなければ大丈夫なようです。今回は特に少し上の方に帯を締めています(リサーチ不足等あるかもしれないですが…)」という演出の尾石さんへの指示書きがあったりして、「そういうところに気を遣っていたのか」というのが興味深かった。

シャフトスタジオについて

・21世紀に入った時期から、アニメ制作がデジタルに移行し、撮影・仕上げ工程によって画面の出来栄えが左右される面のウェイトが大きくなった。そこで、撮影・CG部門など含め自社で制作体制を一貫して管理できる会社は強みを活かせることになり、'00年代にはJ.C.STAFF、シャフト、京アニ、ufortableなどの(自社で一貫して制作を行える)制作スタジオが頭角を表すことになった。

・2004年からシャフトで制作を始める新房監督は、自身の強烈な演出的個性のもとに、デジタル処理に強い大沼心さんと、グラフィカルなデザインおよびカッティングセンスを強みに持つ尾石達也さん(を初めとする若手演出家)を従えてシャフトスタジオのカラーを作っていく。2009年には『夏のあらし』二期を最後に大沼心さんがシャフトからシルリンに活動拠点を移し、『化物語』で満を持してのシリーズディレクターを務めた尾石達也さんが『傷物語』制作のため2016年まで潜伏期間に入る。これによって、強烈な二大個性を失うことになり、2009年はシャフトスタジオにとって一つの大きなピリオドを迎えた年だと思います。

参考:【ぷらちな】アニメ新表現宣言!新房監督作品の奥にアニメ表現の最先端を見た!『さよなら絶望先生』シャフト《前編》

 

・「MADOGATARI展」のパンフレット(2015年時点でのやつですが)を読むと、以前からも度々インタビューなどで話題になっていた「シャフト演出マニュアル」についての話題が。もともとシャフトでシリーズディレクターをやっていた宮本幸裕さんが各話演出の人に「新房演出」「シャフト演出」のルールについて共有するためにまとめたレギュレーションであり、 おそらくレイアウトのとり方や、「アップとロングの入れ方」みたいなののことだと思うのですが、最近では新房さんもこういう自身で課したルールにあまり縛られていないとのこと(この話自体、他のインタビューでもしてましたが)。
その「ルール」というのが具体的に何かは分からないけど、たとえば以下のようなものが含まれるだろうことは想像が付きます。

「限られた時間と人手の中で、生理的に気持ちいいものを『安全に』追究していった」という新房監督。たとえば、同じ場面でキャラクターが会話するときには、アップで入れるのは1人。2人以上を同じ画面に入れる際には、ロング(遠景)にする。それはアップにした人物の様子を、細かい絵の動きで見せなくても良いからだという。そして、会話をさせるときには、しゃべるキャラクターが変わるごとにカットを変える。その早いカット割りが、観る側からすると、テンポ良く新鮮な印象に映るのだ。

ASCII.jp:新房監督のアニメ論 「制約は理由にならない」 【前編】 (1/4)|渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」

『荒川』のときだから、2010年の記事ですね。このときまではこうしたルールは適用されていた。で、こういったルールは近作の『ニセコイ』や『幸腹グラフィティ』とかを見るとそれほど守られていないように見える(もちろん、題材上そういうのが必要じゃないからというのもあるでしょうけど)。こういうところからも、近年の変化というのは伺えると思います。

 

・「MADOGATARI展」という名前に出ているけれど、シャフトのヒット作が『化物語』と『まどマギ』の二大巨頭であるというのは確かな事実としてあって、アニプレ&岩上Pが噛んだこの二作で大ヒットを飛ばしてるけど、逆に言えばそれ以外は(ひだまりなど原作ファン人気は根強くとも)興行的には鳴かず飛ばずなところがどうしてもあります。
ただ、シャフトは一作一作に対しどのようなスタイルを打ち出していくか、原作とのすり合わせで考えて作っていく姿勢があるのが美点だと思います。なので、オリジナルの企画は進めつつ、今後も堅調に原作ファンに受け入れられる作りを模索していくのが一番じゃないかと(外野のファンという立場から見る分には)感じます。

・「MADOGATARI展」 パンフレットでの新房さんのインタビューでは「自分の『ガンバの冒険』や『宝島』を作りたい」と話していて、新房さんの出崎ファン健在ぶりにちょっと嬉しくなりました。新房さんが全話絵コンテを切る(という)オリジナルの探偵ものや、『宝島』のような2クールのエンタメ作品はいずれ是非見れたら良いな、と思います。

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*1:演出上の指示が多いカットに限って上の見にくい位置に置いてあったりするのはマニア泣かせであった

*2:マクルーハンのいうような意味での「クール」とは違っていますが。