highland's diary

一年で12記事目標にします。

山川吉樹『HELLS』(2008)

未見の人になるべく見てもらいたいので、ネタバレなし紹介

多くの人に見てもらおうと考えるなら本当はタイミングよくネタに乗っかってバズらせるとか、そういう手段があるのかなと思いますが(今の『けものフレンズ』みたいな)、自分はそういうのが上手くないしそういう広め方をするのも何かなと思うので普通に宣伝記事を書きます。

本当は初見のときに記事にすべきだったんですけどね。

f:id:ephemeral-spring:20170211041036p:plain

山川吉樹さんといえば、桜井弘明監督作品でのダバ絵作画に定評のあるアニメーターであり(斉木楠雄のエンディングも良かったですね)、近年では『キルミーベイベー』『リトバス』『ダンまち』…などJ.C.STAFFの職人監督としても知られていますが、そんな山川吉樹さんの初監督作がこの『HELLS』(旧題:『HELLS ANGELS』)であります。マッドハウス制作の劇場作品、しかも上映時間二時間近くの大作でありながら恐ろしく知られておらず、つい最近まで山川吉樹さんのウィキペディアページにも全く記載がなかったくらいです。

2008年に東京国際映画祭で上映されながら、2012年に配信開始・ソフト化がされるまで見る手段が一切なく、これが原因でマイナーになってしまったのかもしれないと思いますが、幸い今ではBDも比較的安価で買えるし、レンタルでもそこそこ見かける作品になっています。

『HELLS』は山川吉樹監督、ふでやすかずゆき脚本(この人は元はマッドハウスの撮影出身ですね)、中澤一登作画(アニメーション)という、マッドハウス出身の稀有な才能が合わさって生まれたアニメです。本当にざっくり言えば女子高生が突然トラック事故で地獄に転生して、そして……というお話。
野暮だと思うのであらすじなどについて細かく紹介はしませんが、今石洋之監督の『DEAD LEAVES』風に、極端に強調したパースやコマ割りなど漫画的な表現をこれでもかと投入し、中澤一登のフォルム重視の荒々しいタッチの作画(キレキレ)に、持てる手管をフル駆使してイメージを誇張する演出、間を投入せずつぎ込みまくった台詞と非常に観客に負担を強いる作品になっています。
ぶっちゃけ映画として見れば観客の生理に合わないまで詰め込んであるのでクズクズであると思うけれど、アニメーションとしては間違いなく面白いし支持します。仮にこれが100パーセント原作通りの映像化なのだとしても(自分は原作は未読)、やはりすごいアニメであると思う。

普通にシリアス展開をやっててもギャグになってしまうノリとかはふでやす脚本の味なのかなと思いますが(ミルキィホームズとか)、今回見返して『HELLS』に関してはどっちかというと山川吉樹監督の見せ方の方が要因として大きいなと思いました。演出の破壊的テンションがいっそ清々しいです。
あと中澤一登さんって金田伊功は通っていないと前から公言しているけれど、『HELLS』を見るとバリバリ金田チックな表現もありますね。やはり金田フォロワーの板野一郎さんの影響を受けてるだろうからむべなるかな、という感じではありますが。

なんかスタイルの話ばかりでストーリーについて全然触れていないですが、めちゃくちゃに荒削りながら非常に濃密な展開であるし(それでいて明快!)、声優さんの熱演も良いです。特に主人公:天鐘鈴音(りんね)を演じた福圓美里さんの演技は、『まどか☆マギカ』での悠木碧渾身の演技に比較さるべき好演であると真面目に思う次第です。

今石監督の作品にも非常に似通っているところがあって、GAINAXでいえば『エヴァ』と『キルラキル』と『グレンラガン』の諸要素を全部合わせたみたいな感じ。

この作品(『HELLS』)の基調をなすのはあくまでコメディであると思うけれど、どこか舞城王太郎の作風(『好き好き大好き超愛してる』など)を思わせるところもあったりする、そんな不思議なアニメ。

何か期待値を上げまくるようなことばっか言いまくっていて申し訳ないですが(自分は何だかんだ人を誘って見たりしているので、一人でDVDで見てめちゃくちゃに面白いかどうかは分からないし、多分そんなにはちゃめちゃに傑作というわけでもないので)、気になる方はまあ見てみてください。一見の価値があることは保証します。

ちなみに
本作をDVDやBD(または配信)で見るのであれば、途中で一時停止などという野暮なことはせず、ノンストップで最後まで視聴することを推奨します。それが、この作品が劇場アニメ作品として作られた理由の大きな一つでもあると思うので。

HELLS Blu-ray

HELLS Blu-ray

 

 (最近記事が滞っててすみません次の長文記事も書きます