highland's diary

一年で12記事目標にします。

2017年下半期新旧映画ベスト10

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今年はアニメの記事もちゃんと書く予定です。

2017年は3年ぶりくらいに映画見た本数が150本切りました。とはいえ五つ星映画で上映会もやったし、岩井俊二オールナイトで『スワロイテイル』『リリィ・シュシュ』も初めて劇場で見れたし、わりと満足度高い。というわけで、余計なこと言わずに下半期見た映画の新旧ベスト10を。

上半期は以下の通りです。

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〇『セルピコ』('73)

組織(警察機構)の中で理想を突き通そうとして疎外感を味わう男(刑事)のドラマで、題材はいかにも’70年代アメリカであるが、構成がよく出来てる。アルパチーノ扮する主人公の兵士が、銃弾を食らって病院に搬送されるシーンから始まり、回想で「どうして恨みを買うことになったのか」という過程を順に追っていく。ルメット監督作だが、ルメットの映画って余計なことしないから演出的には好きなんですよね。緊迫感が高まる対話シーンで、ルメットはごくシンプルなバストショットの切り返しを使うんだけど、切り返すことで緊張感が高まっていくという作りで、これがドキュメント感がある。

 

〇『フランケンウィニー』('12)

うーんこれは良かった。パペットアニメなのだけど、劇中の人物がパペットで作った映画を上映するところから始まり、つまりパペットを使ってパペットアニメを作ってる異化効果なシーンになっている。これがなんか凄くノスタルジックを掻き立てられて感動する。あと終わりの場面も画が好き。

 

〇『ベイビー・ドライバー』('17)

今年は新作の実写はあまり見なかったけど、これは見に行って満足感あった。とにかく省略、省略で不要なシーンを飛ばすやり方が上手い。あのターミネーターみたいな不死身の男とか、いちいち漫画的なキャラ造形が良い(エドガー・ライトなので)。

 

〇『エスター』('09)

ネタバレ厳禁ながらオチがわりと知られててミステリの文脈でよく紹介される映画なのかな。でもこれは凄く緻密に作られたスリラー。距離感の演出が絶妙だ。アニメ的に絵コンテに起こせる映画。

 

〇『心の指紋』('96)

ディア・ハンター』を撮ったマイケル・チミノの遺作。

凶悪犯で末期癌余命一ヶ月のアメリカインディアンの少年が、担当の白人エリート医者を人質に取ってナバホ族の聖地を目指す。その過程で心が通じ合うという、ロードムービー。という説明だけで分かるけどとにかく色々と属性詰め込んでていやいやこんなん泣くでしょって感じなのだが、チミノの演出はこのドラマに全力で説得力持たせようとしてて素晴らしい。あのオチを使ったのは英断だと思う。あとアリゾナの荒野がすごく美しく撮られてる。Netflixで見れる。

 

〇『裸の銃を持つ男』('88)

これはtwitterで誰かが感想呟いてて見ようと思ったのかな。大筋のストーリーは大したことないが、個々のシーンがめちゃくちゃ笑えるシチュエーションコメディ。無類の面白さのコント集だった。ピンマイク付けっぱなしだったせいでトイレに行ったときの音声が大音量で実況されるギャグが好きだった。Netflixで見れる。

 

『スクリーム』('96)

メタホラースリラー。ホラー映画マニアの高校生たちが、ホラー映画のお約束とかベタなネタを劇中で話すのだが、その「お約束」に準える形で猟奇殺人事件が行われていく。メタ映画なのだが、メタの水準が観客の「次の展開はこうなるんじゃないか」という期待と、映画の作劇との間に起こっているので、映画の展開と観客との間で駆け引きが起こっている。すこぶる面白かった。ホラーって本来すごく理知的なものだということが分かる。Netflixで見れる。

 

〇『トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン』('81)

エクソシスト』の原作者で有名なブラッティの、二本しかない映画監督作のうちの一つ。

ベトナム戦争PTSDで精神に異常を来した者たちが隔離されている精神病院に、軍医が派遣されてくるところから話が始まる。中盤までは観念的な議論や台詞も多いし、いかにも小説家の作った映画だなという気がするのだけど、後半の展開であっと言わされて最後には感動してしまった。個々の小さなエピソードが後半に活きてくる作劇って好きかもしれない。

 

『ある子供』('05)

ダルデンヌ兄弟の映画はこれまで4本ほど見てるけど、どれも傑作しかなくてどうなってるのかと思う。彼らの撮る映画は、イタリアのネオレアリズモ(市井の人々に焦点を当て、演出的な作為を廃したドキュメント感や不条理な筋書き)を現代的にやっているようなところがあるけど、これはストーリーも含め凄く『自転車泥棒』を彷彿とさせる映画。ひったくりのシーンが物凄かった。

若いカップルが子供を産んで、でも男の方が倫理観クソなので彼女に隠れて子供を売人に売っちゃうんだけど、彼女がめっちゃ怒ったので赤ちゃん取り返して来ましたみたいな話なので、人によっては胸糞だと思う。単純に話でいえば『サンドラの週末』の方が好き。

 

〇『アルカトラズからの脱出』('79)

これは本当にすごい緊迫感の脱獄映画で、傑作だった。これほどドラマも描写もしっかりしてる脱獄映画って他にほとんどないと思う。Netflixで見れる。

ドン・シーゲルって監督として何かやる気ない人なのかなってイメージが勝手にあって、というのも、『ダーティハリー』を監督したときにシーゲルがやる気なかったからイーストウッドが実際には半分以上のシーンを演出してて、実質的にイーストウッドとの共同監督みたいな状態だったらしい。それを聞いてたのであんまり良いイメージなかったのだけど、これとか『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』('56)とか見るとすごく緻密に作ってあるので、もっと他にも見なきゃなあと思いました。

という感じの10本でした。2017年は人から励ましを受けることもままあったし、2018年はもっと頑張りたいと思います。

 

あと「こみっく☆トレジャー312018年1月21日(日)というイベントで、漫画の同人誌を出せれば出す予定です。今から作業して間に合えばですが。また告知とかするかもしれませんが、よろしくお願いします。気が向いたら買ってください。