highland's diary

一年で12記事目標にします。

話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選

ルール
・2014年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

アニメブロガーさんの間では毎年TVアニメのベストエピソード10選を選出するのが恒例と知り、面白そうな企画だなあと思ったので便乗させて貰い、素人目線ながら選んでみます。

「新米小僧の見習日記」さんのサイトでは各サイトのまとめ・集計もやってくれているようです

客観的な「完成度」というよりはあくまで私的に記憶に残ったエピソードをセレクトしました。ノミネート作は、2014年に放映されたTVアニメの内、自分で見た話数全て。放映順に並べました。さらりと読み流していただけると幸いです。

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■『Wake Up, Girls!』第9話「ここで生きる」

(脚本:待田堂子 絵コンテ:中山奈緒美・杉村苑美 演出:有冨興二・中山奈緒美 作画監督:竹森由加・深澤謙二・今岡律之・普津澤時ヱ門)

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9話はTV版『WUG』の中核となるエピソード。
白木徹の口から語られる「人間である前にアイドル」に対する真夢の「アイドルである前に人間」。「アイドルは物語である」というのをベースラインに持つこの作品を体現するような宣言。
一方は震災を機に、一方はI-1クラブ脱退を機に同じ仙台に逃げて来た夏夜と真夢、二人の口から語られる想い。夏夜の語りからはアイドルの挫折からの復帰と福島の復興(3.11)とを重ね合わせて描き、真夢の語りからは先述のアイドル宣言、そして「人を幸せにするためにはまず自分を幸せに」というビジョンを呈示する。そして、その夏夜と真夢の二人を横位置レイアウトで配置し、回想を挟みながら、それを見守り感化される他メンバーを含め描く。真夜中から話し始め、二人の和解、そして菜々美をはじめとするメンバーの決意を祝福するかのように差し込む朝日が美しく、静かな朝の雰囲気と合わさって記憶に残っています。なおこの回のコンテ・演出に参加している中山奈緒美さんは『SAOⅡ』9話のコンテでも、回想シーンのモチーフの合わせ/重ね方等、恐怖を煽るデス・ガンの見せ方が上手かった。
■『未確認で進行形』第12話「わかってる? わかってる」

(絵コンテ・演出:藤原佳幸 作画監督:菊池愛・天崎まなむ・久保茉莉子・尾尻進矢)

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視点による内心描写の描き分け、小紅のキャラ性ともリンクする丁寧な料理描写、要求の高い芝居付けに答える動画工房の作画力、等々、抜きん出たシリーズだった。同じ動画工房の『野崎くん』と比べても、四コマ原作をアニメ化する際のスタンスの違いが際立つ感じで。最終話は、生っぽいしっとりした感じの進行を1エピソード通して味わえる意味でも美味しかった。食事のシーンで〆、というのもらしさがあって良い。『GJ部@』と並べて、2014年ベストの幕引きじゃないかなあとも思います。

■『スペース☆ダンディ』第14話「オンリーワンになれないじゃんよ」

(脚本:うえのきみこ 絵コンテ:谷口悟朗 演出:向井雅浩 作画監督伊藤嘉之、稲留和美)

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 『ダンディ』は演出・作画的な見所も大きいけど、シンエイ動画で主に活動しているうえのきみこさんの脚本参加も大きかった(ゾンビ回とかネタ回でも目立つ)。『ダンディ』自体が最終的には多元宇宙オチだったわけだけど、14話で既にパラレルワールドネタをやっているというのが自由だなあと思います。14話は並行世界のダンディたちが一杯出てくるんですが、それらは皆『ダンディ』の企画段階で描かれたダンディたちメイン三人のキャラクター案っていう。その意味で真にパラレルになっているのも面白い。ナレーターもちゃんと分身するのも笑い所だし、オチも外しているんだけどちゃんと落ちてる感じが素晴らしい。ディテール面だと砂漠で金田アクションやってるっていうのも『BIRTH』っぽくて良いし、この「ゴチャゴチャ雑多なものが詰まってる」感じも、一つ『ダンディ』らしさだなと思いセレクト。

■『selector infected WIXOSS』第8話「あの契は虚事」

(脚本:岡田麿里 絵コンテ:佐山聖子 演出:桜美かつし・吉田りさこ 作画監督:木本茂樹・村上雄・佐野はるか・岡郁美・熊谷勝弘・斎藤美香)

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岡田磨里脚本。この回は、後半の展開が衝撃ですが、晶と二人、香月と同級生、そして水面下での遊月と花代と、エゴとエゴとの衝突が特に高まった回、ということでセレクト。でも9話で、遊月と花代が目配せしていたりと、根元さんの脚本ではフォローは入れているみたいですね。あとこの回は桜美かつし演出回でもありますし。

8話では、携帯を切った香月の「女って最悪だな...」の台詞に合わせて

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 カメラが反対側に回り込んで、ここが、価値観とか、システムがパッと反転して切り替わったかのようなアクセントになって(似たような話を最近したばっかりなので心苦しいですが……)

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その後の、遊月と花代の「中身入れ替わり」になる感じも熱い。

■『ピンポン THE ANIMATION』第10話「ヒーローなのだろうが!!」

(脚本:湯浅政明 絵コンテ:湯浅政明 演出:EunYoung Choi 作画監督:伊東伸高、浅野直之、戸田さやか、西垣庄子)

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 4話のドラゴンVSチャイナ戦でのドラゴンのエフェクトから竜へのメタモルフォーゼ、11話での縦横無尽に動くカメラワークのスマイルVSペコのラリー、と表現的にもドラマ的にも思い出深いゲームが多かった『ピンポン』(挙げたシーン、共に作画は宮沢さんでしょうか)。また、最終話のドラゴンや、4話でのチャイナなど、敗者側への目線の注ぎ方も良かった。私的ベストマッチとして選びたいのは10話のドラゴンVSペコ戦。ドラマ的にも、8話の「ヒーロー見参」、9話のアクマとドラゴンのドラマなどと、バックグラウンドでの積み重ねがあった上での試合。そして「飛翔」のイメージはEDとも繋がる所もある。バトル前半も凄いけど、終盤での、音楽は割合軽妙なものなんだけど、モノローグを重ね、緊迫感あるバトルが進行している感じも堪りません。カット割り、アングル、音楽、表情の付け方、全てが良かった。ラストカット、敗者、ドラゴンの表情も極まっていた。

■『ハナヤマタ』第1話「シャル・ウィ・ダンス?」

(絵コンテ:神戸守 演出:いしづかあつこ 作画監督:王國年)

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マッドハウス作品。クロスカッティングのシーン繋ぎを入れたり、 非リアリズムなまでの花火・桜吹雪、華やかな色彩・画面で圧倒するような1話。1話は漫符処理を大胆に投入したりと画面処理での工夫が目立つ回で、よりキャラの心情に沿う形で演出していると思うのはヤヤの嫉妬を描いた2話なんだけど、レンズフレアや撮影ボカシをふんだんに使った1話の画面処理には圧倒されてしまったのもありということでセレクト。1話はキャラの線もシリーズ随一にシャープな感じがするし、この

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アップ絵での瞼と睫毛間にアイシャドー的な影が付く(華やかで艶のある感じ)処理も、1話では特に際立っているように感じる。

なるとハナの桜吹雪舞う中での踊りは1話で2回あって、初対面の1回目ではなるは憧憬の目つきなんだけど、

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友達になってからの2回目での表情の変化も良いですね

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1回目ではなるの方が手を離しちゃうんだけど2回目では勿論離さない。

この話に限らず、ハナヤマタは夕刻の光差す中で見せ場のシーンになることが多かった。

■『暴れん坊力士!!松太郎』第15話「帰郷」

(脚本:大和屋暁 (絵コンテ・)演出:貝澤幸男 作画監督:小泉昇) 

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『松太郎』屈指の名回にして、2クール目の幕開けを飾るような15話。直前の回が正に松太郎が玲子先生の尻を追っかけているような内容だったのですが、この話は打って変わってのシリアス回。幕下優勝を決めた松太郎が久々に故郷に凱旋。しかし、以前は松太郎を疎ましがっていた兄弟、町の人々から歓待を受けるのにどうにも居心地の悪さを感じてしまう...という筋。松太郎の母親は息子の載った新聞記事を集めてスクラップ帳にしていたり、都会に帰る松太郎の見送りに駆け付けて「辛い事あったら、いつでも帰って来ていいんだよ」と声をかけるなど、とにかく地方上京者泣かせのエピソード。
松太郎が故郷を去る際、人々が松太郎を応援する横断幕を掲げているのを見ても気恥ずかしさか、ドラム缶一杯の水をぶちかけてしまうあたりが松太郎というキャラクター。その水飛沫のカットの、

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この入射光の入れ方!と、力強いパースの付け方は、特に素晴らしかった。
夕陽の入射光/透過光や、シルエットで見せたり、ロングでナメる画を作ったり、レイアウトやアングルも全シーンにわたり締まっていた。決め手となるシーンでは台詞は少な目で情緒ある演出で引っ張っていくような調子が良かった。見送る松太郎の母親など、表情の付け方も光るものがとても多かった。作監は小泉昇さんで、泉恭子さんの夫婦タッグアニメーターの方による二人原画回。
■『アルドノア・ゼロ』第3話「戦場の少年たち-The Children's Echelon-」

(脚本:虚淵玄 絵コンテ:あおきえい・笹嶋啓一(清書) 演出:加藤誠 作画監督:猪股雅美・小林真平・油井徹太郎・奈須一裕・垣野内成美

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 スーパーロボットVSリアルロボット陣営の構図で展開した『アルドノア』。3話は両主人公が戦いに参入するエピソードかな。スレインが、あれで熱いものを秘めた人物であることが分かるエピソードでもあり、冷静沈着なイナホとは対比を成すかのよう。火星のプリンセス・アセイラム姫の顕現もあり。この回は、ニロケラスのバリアの弱点を探り当てるのが話の一つの軸になっていて、「ライターとしての虚淵玄」が繰り返し使って来たけど「脚本家としての虚淵」が使ってこなかったような、ギミックを活かした知略戦になっているのが良かった(その割には考証なってないと言われてたようですが)。

あと、ディテール面に寄ると、伊奈帆がコックピットで姉の張り紙を取るシーンで

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一瞬笑みを浮かべるとか、ニロケラスにトドメさした後の「やったか…?」の緊張の一瞬で

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微妙に汗浮かべてたりとか

細かい演技付けを作画で出してる感じが良くて、ここら辺はあおきえいさんの演技付けかもと思うのですが。

■『四月は君の嘘』第4話「旅立ち」

(脚本:吉岡たかを 絵コンテ:神戸守 演出:いわたかずや・河野亜矢子・イシグロキョウヘイ 作画監督:三木俊明・河合拓也・牧田昌也・野々下いおり・ヤマダシンヤ・菅井愛明・小泉初栄・浅賀和行)

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 演出意図と見易さを駆け備えたレイアウトで見せる3話、情念溢れる演出で見せる4話、シーンに合わせた多様な作画表現やメリハリの利いた見せ方が良かった5話、の流れと考えています。中でも勢いがピカイチだったのは4話。演出的なテンションでもって話の流れを逆転させるような勢いが良いです。「水中で溺れるような」感じの直喩だったりの心象寄りの演出に、ポエティックなモノローグがマッチ。

それ以外にも、「アゲイン...」の一言だけを口にして、残りのモノローグ内容は声に出さずとも通じ合っているようなこの息の合った二人の「以心伝心」感もグッド。

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また、演奏を終えた有馬の、このカット。

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ここは「仰ぎ」の開放感に満ちていて良いですね。ピアノをさっきまで演奏していた手付きのままなんだけど、ちゃんと「顔を上げて/上を向いて」いるので。つまり、かをりの言う「五線譜の檻に閉じ込められる」の逆ベクトル。このカットが開放感に満ちているのは、かをりのその台詞ともリンクしているから(あと、ついさっきまでの上掲の逆光のカットとかでは思い切り下を向いて集中していたから、ですよね)。

考察としては、下記の記事が、音楽とカット割りの切り口から見ていて面白かった。

アニメ『四月は君の嘘』第四話カットについて:追い抜かれる視線(1) - 書肆短評 http://nag-nay.hatenablog.com/entry/2014/12/05/081805
■『異能バトルは日常系のなかで』第7話「『覚醒』ジャガーノートオン」

(脚本:樋口七海 絵コンテ:望月智充 演出:宮島善博 作画監督:坂本勝)

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 この回は殆ど鳩子シーンで選んだようなもの。でもこれを選ぶのはあんまり趣味良くないのかもしれない。それまでの話でも積み重ねられていた、ディスコミニケーションが炸裂する回(というかシーン)。この話は見ていて辛さしかないような......。2分以上の「イタい」長台詞の奔流は、声優の演技も凄いけど、正面から映したり顔を映さなかったり、カット割りも残酷。表現は全然違うんだけど『ef』1期の問い詰めとか思い出す。個人的には『SHUFFLE!空鍋回の数倍はキツいものがあります。

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 以上です。

短く書くつもりが案外長くなってしまった。

悩んだのがあるとすれば『スペース☆ダンディ』からのセレクトか。ストーリー・演出共にウェルメイドだと思ったのは5話(少女アデリーの回)、10話(ループ回)、20話(ロックバンド回)あたり。円城塔の脚本回とかもSF的な思考実験を正面から取り入れてるようで面白いけど、SFアイディアにしても7話の『暗黒神話』オチのような「ナナメ上」を行くような外した感じで使うのが『ダンディ』らしくて面白いなあと思い、うえのきみこさんの脚本回からセレクトしました。

『ハナヤマタ』は2話か1話かで悩んで、1話にしました。『Gレコ』や、京アニ、P.A.作品からも選びたかったですが、10選に絞るのは難しいですね。

こうして10エピソード選んで見ると、作画監督さんの多くクレジットされてる回も多く、『SHIROBAKO』を参照するまでもなくアニメ制作のピーキーなスケジュールを物語っているかの様です。

思うに「エピソード単位10選」に求められている観点とは、恐らくは「アニメ」ファン的な目線、あるいは脚本から作画・CGセクションまで幅広く目配せするゼネラリスト的な観点だと思うのですが、スペシャリスト的な観点からの「10選」も見てみたいような気もしなくもない。例えば「2014年凄かった作画10選」のような......といっても自分は出来ないので人任せなんですけど、どうでしょうか。

何にせよ、2014年も面白いアニメが沢山ありました。来年もアニメが楽しめますように