highland's diary

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縦長サイズのボカロMV

ボカロのMVのスタイルは、(大半の映像作品がそうであるように)画面比16:9の横長サイズがメインなのだが、9:16のような縦長サイズでMVを作っているケースもある。

  • Chinozo 「グッバイ宣言」 feat.FloweR

youtu.be

↑これは16:9の横長サイズの例

 

ショート動画

すぐに思いつくのはTikTokYouTube Shortsなどのショート動画サービスにアップする場合だ。

これらのサービスでは9:16の画面比が一つの規格になっているため、アップしようとすると自ずと縦長サイズとなる。

ボカロPがショート動画をアップする際、一般的には、自身の楽曲のフル版を宣伝する用の切り抜き動画であることが多いだろう。

  • 山田PERFECTという曲を作りました #jonyakitory #オリジナル曲 #vocaloid #shorts #いちまる

www.youtube.com

  • 真面目に、ふざけてます #vocaloid #重音テト #ボカロ

www.youtube.com

また、お試しのデモ楽曲や、箸休め的なショート楽曲がこのフォーマットで出ることもある。

  • Copycat with Gumi SynthV (註:CircusPさんが自身の過去曲を、新しいソフトSynthVの音声ライブラリでカバーする動画)

www.youtube.com

www.youtube.com

ただ、自身のオリジナル曲の全体(フル版)をTikTokYouTube Shortsで投稿しようという人は少ないと思われる。

そもそもYouTube Shortsはアップできる秒数が60秒以内に限られているし、TikTokYouTube Shortsもだいたい20秒~30秒くらいの動画がメインだ。

ショート動画は集中力を要さず気軽に楽しめることを企図しているものなのもあり、ポップスのフル版の投稿はあまり適していないのかもしれない。

以下では、フル版のMVで縦長サイズを採用している例について主にとりあげる(人に教えてもらったやつを含みます)。

 

9:16の縦長

まずは9:16の一般的な縦長サイズのMVを挙げる。スマホ端末で再生し全画面表示に切り替えたときに、映像が画面全体をすっぽり覆うサイズだ。

  • YY - ft.Hatsune Miku

www.youtube.comこちらの「YY」はプロセカにも入っている23.exeさんの楽曲で、おそらく最も知名度が高い縦長ボカロMVと思われる。

スマホのUIを模した画面のなかで、デフォルメされたチャーミングなCGのミクがラップしながら歌い踊るというMV。縦スライド、横スライドなどの動きも入れてスマホサイズの画面を使い切っている秀作。

スマホ画面を模したMVというアイディアは、縦長MVの名作であるリリスクの「RUN and RUN」(2016年)などに由来しているかもしれない。「YY」の投稿は2019年であり、影響関係は十分ありそうだ。

shiba710.hateblo.jp

 

www.youtube.com40mPさんの手によるポップな楽曲。

動画の概要欄に記載のある通り、これは2021年当時新しくオープンしたショッピングモールのタイアップ楽曲であり、520インチのビジョンに投影されてライブが行われたとのことで、おそらくその特殊な巨大ディスプレイに合わせてこの縦長サイズになっていると思われる。

またそれと同時に、スマホ端末での再生にも適したサイズになっている。実際MVの中にも、ショッピングモールの巨大ディスプレイを想定した演出に加えてスマホ画面を想定した演出も入っており、どちらで鑑賞しても違和感なく見れるものになっている。

マクロとミクロの両方をカバーしているわけで、優れた工夫だと思う。

 

  • lpalpa

www.youtube.com宇田もずくさんの楽曲で、概要欄にも「スマートフォンでご覧ください」と記載されている。

縦長サイズなのは、おそらくキャラクターをフルショットで映して全身の動きを見せるため。ミニマルなトラックで、ドロップにあたる部分ではボーカルの声が刻むリズムに合わせてキャラのファッションが次々とシームレスなアニメーションで切り替わる。2021年の投稿だけど、今見てもかなりスタイリッシュ。

 

  • 君の世界は透明なんだね / 可不・星界 

www.youtube.comrinriさんの楽曲で、2022年の投稿。

実写のようなグラフィックを背景に使用し、ちょうどスマホで撮影した風景のようなテイストになっている。一番サビでは人物の全身をバックショットで映して、それが背景に溶け込むような演出になっており、縦長のフレームならではのエモーションがある。

また、縦長の画面全体をめいっぱい使うリリックモーションも優れている。

 

9:16以外の縦長

  • うらみ交信 / デフォ子

www.youtube.com稲むりさんの「うらみ交信」も縦長サイズだが、こちらは画面比は3:4となっているとのこと。

そしてこの3:4の画面比によって、9:16では出せない味が出ているようにも感じられる。3:4だとスマホで全画面表示に切り替えたときに、9:16の場合と違い、映像が画面全体をすっぽり覆うことはない。

先ほど挙げた「YY」を9:16のスマホ端末で全画面表示すると左のようになり、「うらみ交信」だと右のようになる。

「うらみ交信」の方は上下に何もない余白ができているが、これによって画面内に枠が作られて、フレーム内フレームのようになる。

「うらみ交信」はデフォ子がカメラを持っており、写真を撮るMVとなっているため、この(ある意味中途半端な)画面比によって、写真のようなフレームを意識させることが効果的に働いているのではないだろうか。

 

youtu.be

youtu.be読谷あかねさんの「擦過ス」のMVは画面比が1:1になっている(そのため厳密には縦長ではないが)。曲の長さが60秒ジャストであることから、YouTube Shortsにも同一のMVを投稿できているのも面白い。

YouTubeアプリのUI的に、画面比1:1だと以下のような表示ができるようになる。

少し説明が難しいが、アプリで動画の画面の下にバーを出した時に、その上部分に画面全体がすっぽりと見切れずに収まるようになるのだ。

ボカロとは違うが、例えば花譜の以前のMVもこの1:1の画面比を採用しており、同様の表示が可能になっていた。

  • 花譜 #22 「過去を喰らう」 【オリジナルMV】 

youtu.be

画面比1:1はポートレート写真などにぴったりのサイズであり、このMVだと花譜がスマホの向こうにいて、こちらに向けて話しかけているような絵を作ることができている。

 

縦長サイズのボカロMVはなぜ少ないのか

ただ、上述のようにいくつか例を挙げることはできるものの、数はそれほど多くはないと言える。

縦長サイズのボカロMVはなぜ少ないのか?というと、個人的にはボカロジャンルがニコニコ動画と密着しているのが一つの理由としてありそうと考えている。

というのも、現在ニコニコ動画YouTubeと違い縦画面の表示に対応していないようだからだ。

www.nicovideo.jp

「YY」をニコニコ動画で再生すると、「横画面でしか見たことない人は一回縦で見た方がいい」というコメントが確認できるし、実際に(ブラウザ版で再生する限りだと)縦で全画面表示することはできない。

動画の概要欄にも以下のような記載がある。

※縦画面仕様で作ったので、スマホの方はYoutube版推奨です。
(アプデ前はニコニコも縦画面で見れたのになぁ...)
https://www.youtube.com/watch?v=TcHvEFxk_78&t=107s

一つ気になる点として、「YY」は2019/10/9投稿の動画だが、それ以前はニコニコも縦画面で見れたということだろうか…?これについてもし詳しい人がいれば情報を教えていただけると嬉しいです。

また、2024/08/12現在、ニコニコ動画サイバー攻撃の影響によりブラウザ版しか利用できず、アプリ版でどうなっているかは確かめられないようなので、アプリ版では縦画面で見れるようになっている可能性はあります。

(2024/09/11 追記)アプリ版でも縦画面表示はできないようです。

ここで言いたいこととしては、「大半のボカロ曲はニコニコ動画に(も)MVが投稿されている」&「ニコニコ動画は縦画面で見れない」によって、縦画面を使った演出があまり出てこなかったという可能性はあるのではないだろうか。

逆に言うと、最初からニコニコ動画を拠点において活動していないアーティストの場合はあまり制約はなかったと言えるかもしれない。

 

また、ボカロに限らずそもそも一般に「縦長MV」はそこまで流行っているわけではないということも考えられる。2010年代中盤にはリリスクの「RUN and RUN」のような試みが見られたが、スマホでの視聴がデフォルトになった今では真新しさが減っているし、なんだかんだで「尺が長いMVはやっぱり横長サイズで見たい」という考えに回帰しているのではないだろうか。

ただ、TikTokをはじめショート動画文化圏は現在進行形で拡大している。また、再生時間が短い曲が増えているのでショート動画の尺で曲のフルを流せるケースも多くなりそうだ。そのため、これからは趨勢が変わっていくかもしれない。

 

ショート版のMVが別に作られる例

最後にボカロではないが、ボカロと隣接するカルチャーにおいて興味深い例があるため記しておく。

  • 私が明日死ぬなら / キタニタツヤ

www.youtube.comタニタツヤさんの「私が明日死ぬなら」はフル版のMVがすでにフロクロさんにより制作されているが、それとは別にショート版のMVが可ラッカさんにより制作されている。今後、このようにショート版に使う用にMVを新しく作るという例も出てくるのかもしれない。

 

それ以外にも、縦長の画面比で作られているボカロMVを何か知っている方は教えていただけると幸いです。

 

以下追加

  • 点.mp4 (投稿者:安見すや)

www.youtube.com

youtu.be

  • 『デデデ・デデデデ・デスティニー 』feat.宮舞モカ MV 

youtu.be

  • ROT FOR CLOUT (feat. Kasane Teto) 

youtu.be

  • 最愛なるあなたは花葬/虻瀬

www.youtube.com

 

  • デュアル透過 / v_flower

youtu.be

 

www.youtube.com

youtu.be

 

  • カンザキイオリのカバー動画のシリーズ

youtube.com

    • 心拍数♯0822 / 蝶々P - Covered by カンザキイオリ

www.youtube.com

 

  • bilibili動画について(情報提供ありがとうございます…!)