highland's diary

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アニメミライ2014見てきた

今回はわりと短めの感想です。

 

アニメミライ2014見てきました。感触としてはなかなか良かったのでは、という感じです。アニメミライはアニメーター育成プロジェクトではあるのですが、毎回ちゃんと特色のありコアなファンでなくとも楽しめる作品に仕上がっているのが良いです(勿論監督含むスタッフ陣の力が大きいのですが)。自分は過去のアニメミライはTV放映で見てたので、劇場で見たのは今回が初めてでした。

 

アニメミライ2014は、「パロルとみらい島」「大きい1年生と小さな2年生」「黒の栖」「アルモニ」の4本でした。

 

まず、「パロルのみらい島」。

ドラえもんシンエイ動画らしいキッズ・ファミリー層向けの作品ですが、王道エンタメのお話で、幅広く支持されそう。話す動物たちのいる島と「魔女宅」風のヨーロッパ市街が舞台で、アニメーターにとってもケモノキャラとカーニバルの日の西洋人と、割合珍しい2タイプのキャラクターを動かすことは良い経験になったのではないでしょうか(特に動物キャラは、アニメーターの中でもしっかり動かせる人が減っていると聞きます)。ハガレンなどで大活躍した金田フォロワーの亀田祥倫さん作監ということで期待していたのですが、波の背動やサーカスでの立ち回りなどケレン味のあるアクションも多く、動物もヒトも表情豊かで生き生きした演技でとても楽しめました。このアニメ、ケモノキャラがちゃんと動くというだけでも推しますが、ヒロイン役のリコット(CV.川澄綾子)はとりわけ可愛く魅力的です。亀田さんは自身の持つ「お尻へのフェチズム」を公言していましたが、そういったものを求める層にも楽しめるんじゃないかな?(たぶん…)

 

お次は「大きい1年生と小さな2年生」。劇場版ドラえもん宇宙兄弟の監督で知られる渡辺歩監督作品です。渡辺さんもシンエイ動画出身で、この作品も「ぜんまいざむらい」のような、A-1 picturesのファミリー向け作品の系列に位置づけられる感じであり、シンエイ動画的なフィルムが2連続だったような印象は持ちました(と言ってもテイストはだいぶ異なりますが)。国産の児童文学にあるような素朴な雰囲気で、渡部歩さんテイスト(偏見多し)な作品ですね。田舎の背景や自然に囲まれたシーンが多く、そういったレイアウトを多く描くこともアニメーターの訓練になったと思われます。武蔵野くんだりまで現地取材もしたそうな。派手なアクションはないですが、キャラクターの細かい演技などを楽しめるような出来栄えでした。ショタ好きの人は喜びそうだ。児童向けながら、ツインテの幼馴染みが出てくる作品でもあります。

 

3作目は「黒の栖」。これは初め、死神が見える高校生少年が出てきて、そういうドラマなのかなー(死神に焦点を当てて『死神の精度』的な感じに?)とか思ってたら幼馴染の女の子との関係がクローズアップされて、凄く(理由は不明確ながらヒロインが主人公を必然的に求めるような状況に陥り主人公との関係性に物語全体が収束していくという意味での)「セカイ系」的な作品でした。お話の方は、主人公の決断に至るまでの描写がやや不明確なので、説得力に欠けている感じ。だから、やや古臭いノリではあるな、という印象だったんですが、作画的には、4°Cらしい造形の(線がやや少ないリアルっぽい感じの)キャラクターで演技も日常芝居もアクションもちゃんとしたものだったし、申し分ないです。

 

最後に「アルモニ」。月並みですが、個人的にはこれが一番良かった。やはり吉浦康裕監督率いるスタジオ六花の力です。とりあえず情報量は一番多いし一度見たきりでは取りこぼしも多いので、またじっくり見返したいなあ。

作画的には、キャラデ/作画監督の碇谷敦さんもなかなかいい仕事をしていると思います。今期のキルラキルなどで作監やってる中森晃太郎さんも原画として参加していました。

吉浦監督は屋内を舞台にした作品が上手い人だと見ているのですが、「アルモニ」でも高校の教室が舞台としてクローズアップされています。そして、その臨場感や良しです。高校の教室って人物同士の関係性やコミュニケーションが重要になってくる空間で、あらゆる会話が関係なく耳に入ってきたり他人のしていることが目に入っていたりする訳ですが、そういった雰囲気が全体を通して出てて程よい緊張感があります。

また、「イブの時間」などでも出ているようにキャラクター同士の掛け合いの独特なリズムやおかしな感じなど随所に見られ、見ていて楽しめます。

他にも見所としては、物語中で言われる、ヒロインの持つ「セカイ」(=夢の中で見る光景)を「PV要素」として劇中に取り入れているのですが、これが『パテマ』的感じのファンタジー的異世界で結構いい感じ。同種のクリエーターである新海誠がPV作家として活躍しているのを見ると、吉浦監督もPV作家としてのポテンシャルは大きいのでないかと見ています。

「人は皆、異なる「セカイ」を持っているーーー」という印象的な出だしから始まるボーイ・ミーツ・ガールモノなのですが、ドラマ的な部分の落とし所は少々疑問に思うところも。

(持っているセカイが違う/同じ以前に、二人の間に誤解が生じているわけで…それも含めて、セカイとセカイとが奏でる”harmonie”ってことになるのでしょうか…?そもそもharmonieはharmonyと意味は同じってことで良いんだろうか。謎。)

あと、主人公たち男子がラノベを読んだりアニメの感想を話したりしている所も、リアル感に一役買っていると思います。いわゆる「2.5次元」(以下参照)的な味付けも効果的だったかと。

 

以上のような感じです。

アニメミライ2014総括としては、自分的にはなかなか良かったというところです。そして、何故か全て男主人公でした。それぞれの監督がその持ち味を生かせるものがたまたま全て男主人公だったのでしょうか。しかもその内3作品に幼馴染みヒロインが出てきます。幼馴染み好きの僕としては嬉しかったです。

 

関係ないですが、最近幼馴染み系ヒロインをあまり見なくなったのは、地縁的な共同体が失われていくと共に「幼馴染み」という存在がリアリティを失ってきた事と、あとは主人公との親密さや積み上げてきた過去の厚みという点では幼馴染みよりも姉・妹(あるいは兄・弟)の方が大きいので有利であるという事の二つが大きな原因と見ています。(地縁的な共同体の喪失と並行して一方で少子化も進んではいますが、実際に一人っ子ばかりというわけではないし、「姉妹」という存在がリアリティを失う程ではないと思います。また、姉妹は「結婚できにくい」というデメリットがありますが、最近では萌えの対象であるヒロインと「結婚」とか「家庭を成す」という回路や志向が少なくなっていってるのでデメリットが大きいものじゃなくなってきたのも関係しているのかな、と考えています)

 

というわけで、ではまた。